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 鉛筆を新調した。前回購入したのは高校1年生のときだから、15年ぶりだ。今回はたまたま試験があるので前日に新調することになった。小学校のときのライバルが購入していたものと同じモデルだ。このままの形で筆箱として使っていたのを思い出す(笑)。彼とは4年生以来の好敵手で、学年の成績トップを良く争ったものだった。4教科なら僕の方が通算5回もトップを取っていて主席だったのだが、トータルで言うと音楽も運動も出来る彼のほうが上だった。ただ彼には独創性がなく、僕には少しだけあるという違いはあった。彼は合理的であったし、僕は理想的だった。結果としては、彼が勝ち、僕が負けた。えんじ色のuniは敗北と涙の象徴でもあったが、僕はもう大人になったのだ。


 さて、前回購入した1ダースをほぼ使い切ったのかというとそうではない。ナイフで削りにくくなったのでお払い箱になった。実質60%程度を使ったに過ぎない。しかも2,3本はどこかに行ってしまったから、それらが寿命を全うしたかどうかは分からない(でも古いカバンを捨てようとするとき、1本は出てくるものだ)。
 前回の1ダース分の鉛筆は紙箱で、高校、大学、大学院という受験戦争を勝ち抜いた勝利の鉛筆であり、キャラシートの作成に汗した青春の鉛筆であり、当時は萌えという概念が一般にはなかったにもかかわらず自分でスケッチブックに書いたいろいろな小説のヒーローヒロインのラフスケッチに使用された、いわば職人の鉛筆である。ALVロゴをはじめて書き込んだのも三菱鉛筆9800シリーズの外箱だった。これはよれよれなのだが無事だから、今度写真を撮りたい。

 この12本は今ここから始まる僕の歴史とともに歩く。そしてうち3本にカッターナイフを入れて命を与える。鉛筆をあまり使わなくなった現代、次に買い換えるのは15年よりもっと後だろう。いや、使い切って寿命をまっとうできるのかすら危うい。
 そして15年前も、今日も、僕が初夏の兆しを見せるアスファルトの空気の揺らぎの中を歩きながら町の何の変哲もない文房具屋にふらっと入って購入した三菱鉛筆を、引退した僕は15年後か20年後かに再び新調するのだろうか。この歳になると思い出すのだ、あの小学校から大学に入るまでの受験戦争の残滓のような風景を。ほんの一瞬のフラッシュバックとともに。全てが希望だった1980sを。全てが戦いだった1990sを。

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